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はじめに:データ分析は、これからのビジネスの「基本」です

今のビジネスの世界では、「データ」をうまく使えるかどうかが、会社の成長を大きく左右します。データ分析が苦手なままだと、ライバル企業に差をつけられてしまうかもしれません。
そこで多くの企業が導入しているのが、BIツール「Tableau」です。Tableauは、たくさんの数字や情報を、パッと見てわかるグラフに自動で変身させてくれる、とても便利な道具です。うまく使えば、ビジネスの課題を見つけたり、新しいチャンスを発見したりする強力な武器になります。
しかし、どんなに便利な道具も、使い方を知らなければ宝の持ち腐れです。特に、初めてTableauに触る方は、どこから手をつけていいか分からず、よくある失敗をしてしまいがちです。
この記事は、そんなTableauを使い始めたばかりの初心者の方と、その指導役である先輩社員の方々のための「取扱説明書」です。初心者がどんなことでつまずきやすいのか、そして先輩は後輩にどうやって教えればいいのか、具体的なポイントを分かりやすく解説していきます。
第1部:Tableau初心者のための実践ガイド:よくある7つの失敗と、その解決策
ここでは、Tableauを使い始めたばかりの人が、ついやってしまいがちな失敗を7つ紹介します。それぞれの失敗について、具体的な例と、どうすればうまくいくのかという解決策をセットで説明します。
1. 「全部盛り」で情報が大洪水!:目的が多すぎるダッシュボード
- よくある失敗
「あれもこれも見せたい!」という気持ちから、たくさんのグラフを1枚の画面(ダッシュボード)に詰め込んでしまうケースです。売上、利益、顧客数、地域別データ…と情報を盛り込みすぎた結果、結局何が一番言いたいのか分からない、ごちゃごちゃしたレポートになってしまいます。 - 身近な例でいうと…
会議の資料で、1枚のスライドに文字やグラフをぎっしり詰め込みすぎて、どこを見ればいいか分からなくなった経験はありませんか?それと同じことがTableauでも起こってしまいます。見る側は情報を読み解くだけで疲れてしまい、大切なポイントが伝わりません。 - 解決策:「1ダッシュボード=1目的」を心がける
- 基本ルール: 1枚のダッシュボードで伝えたいことは、1つか2つに絞りましょう。「このレポートで、一番何を知ってほしいんだっけ?」と自分に問いかけるのがスタートです。
- 具体的なアクション: まずは、会社の全体像がわかる「まとめページ」を作ります。そこから「もっと詳しく見たい人はこちら」というボタンを用意して、クリックすると「地域別の詳細ページ」や「商品別の詳細ページ」に移動できるようにしましょう。こうすることで、見る人が自分の知りたい情報にスムーズにたどり着けます。
2. 数字の「合計」と「平均」を勘違い!:データの集計ミス
- よくある失敗
Tableauは、数字のデータをグラフにすると、自動的に「合計(SUM)」で計算してしまうことがあります。例えば、「商品の平均価格を知りたい」のに、すべての商品の価格を「合計」してしまい、「合計金額は1,000万円です!」と報告してしまうような、ありがちですが非常に危険なミスです。 - 身近な例でいうと…
社員の年齢層を知りたいのに、全員の年齢を「合計」して「社員の合計年齢は50,000歳です」と言っても、何の意味もありませんよね。知りたいのは「平均年齢」や「20代、30代が何人いるか」のはずです。 - 解決策:「ディメンション」と「メジャー」を意識する
- 基本ルール: Tableauには「ディメンション(分析の切り口となる項目。例:商品カテゴリ、地域名)」と「メジャー(集計したい数字。例:売上、数量)」の2種類のデータがあることを覚えましょう。
- 具体的なアクション: 数字の項目をグラフに持っていくときに、右クリックしながらドラッグする癖をつけましょう。そうすると、「合計」「平均」「最大」「最小」など、どんな計算方法にするかを選ぶ画面が出てきます。これで、うっかりミスを防げます。
3. データ同士がうまく繋がらない!:データソースの管理ミス
- よくある失敗
複数のファイル(例えば、売上データと広告データ)を合体させて分析しようとしたときに、うまく繋がらずにおかしなグラフができてしまうことがあります。片方は「日ごと」のデータ、もう片方は「週ごと」のデータなのに、無理やり「日付」で繋いでしまい、間違った分析結果を信じてしまうケースです。 - 身近な例でいうと…
部署ごとに別々のExcelファイルで顧客リストを管理していて、いざ全社のリストを作ろうとしたら、「顧客ID」の付け方がバラバラで名寄せが大変…という状況に似ています。元になるデータが整理されていないと、正しい分析はできません。 - 解決策:データの「つなぎ方」をマスターする
- 基本ルール: 「ゴミを入れたら、ゴミしか出てこない」。分析の正確さは、元になるデータのきれいさで決まります。
- 具体的なアクション: Tableauにはデータのつなぎ方がいくつかありますが、まずは「リレーションシップ」という一番簡単で柔軟な方法を使いましょう。どうしても必要な場合だけ、「結合」や「ブレンド」といった他の方法を試す、という順番で覚えるのがおすすめです。
4. 「リアルタイム」にこだわりすぎて遅い!:ライブ接続と抽出の使い分けミス
- よくある失敗
「常に最新のデータが見たい!」という理由で、いつでもデータベースに直接データを取りに行く「ライブ接続」を選んでしまうケースです。しかし、元になるデータが膨大だと、グラフが表示されるまでに何分もかかったり、フィルターを一つ変えるたびに待たされたりして、使い物にならなくなってしまいます。 - 身近な例でいうと…
毎日1回しか見ないレポートのために、1分ごとにデータを更新し続けるのは、パソコンにもネットワークにも大きな負担がかかり非効率です。目的に合った更新頻度を選ぶことが大切です。 - 解決策:目的によって「ライブ接続」と「抽出」を使い分ける
- 基本ルール: パフォーマンスも機能の一部です。遅いダッシュボードは、壊れているのと同じです。
- 具体的なアクション:
- ライブ接続を使うとき: 本当に今この瞬間のデータが必要な場合(例:工場の機械の稼働状況モニター)だけ。
- 抽出を使うとき: 1時間ごと、1日ごとなど、決まったタイミングでの更新で十分な場合。ほとんどのレポートはこちらの「抽出」で問題ありません。抽出は、Tableauがデータを手元にコピーしてくるようなイメージで、表示がとても速くなります。
5. Tableauの外で手作業!:計算フィールドを使わない
- よくある失敗
「去年の売上との比較(前年比)」を計算したいときに、一度TableauのデータをExcelに書き出して、Excelで計算してから、またTableauに読み込ませる、という二度手間をしているケースです。Tableauの中だけで完結できる便利な機能を知らないために、時間のかかる作業をしてしまっています。 - 身近な例でいうと…
Excelの関数を知らずに、電卓で一つひとつ計算しているようなものです。便利な機能を使えば、もっと速く、もっと正確に作業が終わります。 - 解決策:「計算フィールド」という便利機能を活用する
- 基本ルール: 欲しいデータが元データの中に無ければ、作ってしまえばいいのです。
- 具体的なアクション: Tableauには「計算フィールド」という、Excelの数式のような機能があります。これを使えば、「売上 - 費用 = 利益」といった簡単な計算から、「IF文」を使った条件分岐、「DATEDIFF」を使った期間の計算まで、Tableauの中で自由自在に新しい指標を作ることができます。
6. いつも同じグラフばかり…:棒グラフと折れ線グラフへの固執
- よくある失敗
どんなデータを見るときも、使い慣れた棒グラフや折れ線グラフばかりを使ってしまうケースです。もちろんこれらは優れたグラフですが、データの種類や伝えたいメッセージによっては、もっと適したグラフがあります。いつも同じグラフばかりでは、データに隠された面白い関係性を見逃してしまうかもしれません。 - 身近な例でいうと…
工具箱にドライバーとハンマーしかなく、どんなネジもハンマーで叩いて入れようとするようなものです。ネジの種類に合ったドライバーを使えば、もっと簡単で綺麗に仕上がりますよね。 - 解決策:「表示形式」機能をヒントに、グラフの種類を学ぶ
- 基本ルール: グラフの選び方一つで、データの見え方は大きく変わります。
- 具体的なアクション:
- 「表示形式」を使ってみる: Tableauの画面右上にある「表示形式」は、選んだデータにおすすめのグラフを教えてくれる便利な機能です。まずはこれをヒントに、色々なグラフを試してみましょう。
- グラフの使い分けを覚える:
- 棒グラフ: 量の大小を比べるとき
- 折れ線グラフ: 時間と共にどう変化したかを見るとき
- 散布図: 2つの数字の関係性(例:広告費と売上の関係)を見るとき
- ヒートマップ: 表の中から、数値が大きい(色が濃い)場所をパッと見つけたいとき
7. 自分にしか分からない!:見る人のことを忘れたレポート
- よくある失敗
データや計算は完璧で、グラフも綺麗にできている。でも、専門用語だらけで、タイトルや説明も不親切。作った本人にしか理解できない「自己満足」のレポートになってしまっているケースです。 - 身近な例でいうと…
社内の専門家だけがわかる略語だらけのメールを、他部署の人に送ってしまうようなものです。相手に内容が伝わらなければ、コミュニケーションとしては失敗です。 - 解決策:データで「物語」を語ることを意識する
- 基本ルール: ダッシュボードは、ただのデータの置き場所ではなく、見る人に何かを伝え、行動を促すための「物語」です。
- 具体的なアクション:
- 見る人を想像する: このレポートを見るのは誰?その人は何を知りたい?
- 分かりやすいタイトルをつける: 「地域別売上合計」ではなく、「第3四半期は、東日本エリアが売上を大きく伸ばしました」のように、結論がわかるタイトルにしましょう。
- 補足説明を入れる: グラフの重要な部分に「新製品の発売で売上が急増」といった注釈を入れると、見る人が一目で状況を理解できます。
- 「5秒ルール」を試す: ダッシュボードをパッと見て、5秒で「何が言いたいのか」が分かるかどうか、同僚などにチェックしてもらうのも良い方法です。
第2部:先輩・教育係のための指導ガイド:効果的な育成アプローチ
ここでは、初心者を指導する立場の先輩社員が、後輩を効果的に育成するためのポイントを解説します。
1. 「育成ロードマップ」を作る:計画的なOJTの実施
- 指導のポイント
いきなり「Tableau、自由に使っていいよ」と丸投げするのはやめましょう。まずは簡単なゴールを設定し、段階的にステップアップできるような計画を立てることが大切です。 - 具体的なアクションプラン
- ステップ1:基本操作に慣れる まずは簡単なExcelファイルなどを繋いで、Tableauの画面構成や基本的な操作に慣れてもらいます。
- ステップ2:グラフを作ってみる 棒グラフや折れ線グラフなど、基本的なグラフを一つずつ作る練習をします。
- ステップ3:ダッシュボードを組み立てる 作ったグラフを組み合わせて、フィルターなどで操作できる簡単なダッシュボードを作ってもらいます。
- ステップ4:計算機能に挑戦する 簡単な計算フィールドの作り方を教えます。
- ステップ5:人に伝える練習をする 最後に、作ったダッシュボードを使って、他の人に分析結果を説明する練習をします。
2. 「スモールステップ」で成功体験を積ませる
- 指導のポイント
いきなり難しい課題を与えるのではなく、簡単な課題から始めて、少しずつレベルアップさせていくことが、後輩のモチベーションを維持する上で非常に重要です。 - 具体的なアクションプラン
- 最初の課題: きれいに整理されたデータを使って、簡単な棒グラフを1つ作る、といった達成しやすい課題から始めます。「できた!」という成功体験が、次の学習意欲に繋がります。
- 中級の課題: 次に、複数のデータを繋いだり、フィルターを使ったりする必要がある、少しだけ複雑な課題に挑戦してもらいます。
- 実践的な課題: 最後に、実際の業務で使うような、少し整理されていないデータを使ったプロジェクトを任せてみます。
3. 「なぜ?」を問いかけ、考える力を育てる
- 指導のポイント
優れた分析者は、ただツールが使えるだけでなく、データを見て「これはどうしてだろう?」と疑問を持ち、自分で次の分析に進める力を持っています。この「考える力」を育てることが、教育係の最も重要な役割です。 - 具体的なアクションプラン
- 答えを教えず、質問する: 「なぜこのグラフを選んだの?」「この数字が急に伸びているのは、何か理由があると思う?」といった質問を投げかけ、本人に考えさせます。
- 「データで遊ぶ」時間を作る: 「今日はこのデータを使って、何か面白いことが見つからないか自由に探してみて」と、目的を決めずにデータを探索する時間を与えます。好奇心を刺激することが大切です。
- 発見を褒める: 後輩が何か新しい発見をしたときは、たとえそれが小さなことでも「面白いところに気づいたね!」と褒めてあげましょう。
4. 「ルール」と「信頼」のバランスを取る
- 指導のポイント
効果的な指導には、守るべき基準を示す「ルール」と、本人に任せてやらせてみる「信頼」の両方が必要です。 - 具体的なアクションプラン
- ガイドラインを提供する: ダッシュボードを作る上での社内ルールや、推奨されるデザインのテンプレートなど、守るべき基準を明確に示します。
- レビュー会を実施する: 新人同士で自分の作ったものを見せ合い、フィードバックし合う場を設けます。人に説明する良い練習になります。
- 小さなプロジェクトを任せる: 実際の業務に近い、でも失敗しても影響が少ないプロジェクトを任せてみましょう。自分で考えてやり遂げる経験が、一番の成長に繋がります。完成したものは一緒にレビューし、良かった点と改善点を伝えます。
結論:データを味方につけて、ビジネスを成功に導こう
Tableauを使いこなすまでの道は、決して平坦ではありません。初心者はたくさんの壁にぶつかるでしょう。しかし、その一つひとつの失敗が、成長のための貴重な学びの機会となります。そして教育係の役割は、単にツールの操作方法を教えることではなく、データを見て考え、ビジネスに活かすことができる次世代のアナリストを育てることです。
本稿で紹介した「計画的な育成」「段階的な成長」「好奇心の尊重」「信頼に基づく指導」といった考え方は、私たちテラスカイがデータマネジメントを支援する上で大切にしていることです。私たちは単にツールを提供するだけではありません。お客様がデータという強力な武器を使いこなし、ビジネスという戦場で勝利を収めるまで、共に歩む経験豊富なパートナーでありたいと考えています。
表1:初心者のよくある失敗と、先輩のための対策まとめ
| よくある失敗 | 初心者ができる対策 | 先輩ができる指導 |
| 1. 情報の洪水 | 1つのレポートでは1つの目的を伝えるようにし、詳細は別ページに分ける。 | 作成を始める前に、「このレポートで一番伝えたいことは何か」を一緒に考える。 |
| 2. 数値の誤解 | 「合計」なのか「平均」なのか、集計方法を毎回意識して選ぶ。 | データの「粒度(細かさ)」が結果にどう影響するか、具体例で示す。 |
| 3. データソースの混乱 | データのつなぎ方を理解し、まずは一番簡単な「リレーションシップ」から試す。 | データ準備を「分析の土台作り」と位置づけ、分析前にデータが正しいか確認する習慣をつけさせる。 |
| 4. パフォーマンスの軽視 | 表示速度を優先し、基本的には「抽出」を使う。 | 「表示の速さ」と「情報の新しさ」のどちらが重要か、目的ごとに考えさせる。 |
| 5. 手作業への固執 | Tableau内の「計算フィールド」を使い、面倒な手作業を自動化する。 | 計算フィールドを「便利な関数」として紹介し、より分析に集中するよう促す。 |
| 6. いつも同じグラフばかり | 「表示形式」機能をヒントに、色々なグラフを試してみる。 | それぞれのグラフがどんな「物語」を語るのに向いているかを教え、表現の引き出しを増やす手伝いをする。 |
| 7. 独りよがりな分析 | 常に「誰がこれを見るのか」を意識し、分かりやすい言葉と説明を心がける。 | 「5秒で内容が伝わるか?」を合言葉に、コミュニケーションツールとしての完成度を評価する。 |